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そこはかとなく愉しからずや

ヴァヌアツの呪術の文化人類学的視点と日本の福子思想

ヴァヌアツに惹かれて、今日は大阪大学中之島センターで「呪術とむきあう文化人類学の視点から」という大阪大学大学院人間科学研究科の白川千尋教授のお話を聞いてきました。呪術というとスピリチュアルな好奇心をくすぐられるのですが、文化人類学とは他者理解の学であり、フィールドワークの学問であると言うことは、新たな発見でありました。フィールドワークによる他者理解は福祉概念にも通じる試みだと思います。

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文化人類学的視点の呪術とは

講義のレジメを要約します。

文化人類学は呪術をどのように理解しようとしてきたのか?いかにして学問の対象にしてきたのか?

【未開の証として呪術を捉える】

20世紀前半以前は、呪術は研究者による自分目線の理解で、自文化中心主義的理解であり、迷信や疑似科学的で、後進性や未開の証として捉えられていました。

【偶然を必然化するための呪術】

20世紀半ばになると、偶然を必然化するものとして捉える見方が出てきます。

「ものごとの一般性として・普遍性を説明するものとしての科学」「ものごとの個別性・特殊性を説明するものとしての呪術」という捉え方です。

つまり、「どのようにして(how)の問いに答えるものとしての科学」「なぜ(why)の問いに答えるものとしての呪術」という個別の説明理論が出てきます。

【説明理論としての呪術=陰謀論のような】

また、1990年代以降には、近代化やグローバル化の増大にともない、株価や為替の変動、国際機関の主導による構造調整政策や公務員り大量リストラといった出来事が頻発。そうした社会変化がなぜ生じるに至ったかを説明づけるものとして、説明理論として陰謀論的なものが出てきます。

【文化人類学としての呪術】

異文化・異世界理解の学=他者理解の学。

全体論的視点として、社会・文化を個別分野単位でなく、全体的・学際的に把握する。

自分にとって常識的であった価値観や考え方を別の角度から捉えなおす(相対化)

それは自文化・自社会理解の学、自己理解の学であるという講義内容でした。

ヴァヌアツの邪術

ヴァヌアツでは人口の9割がキリスト教徒ですが9割が邪術を信じています。

邪術とは習得可能な秘儀で、キリスト教伝来以前の19世紀後半では、呪術は伝統首長のみが保有していました。

村の規範を侵した者などを罰するための社会的制裁としての邪術がありました。それがキリスト教により禁止され消滅します。

その後、他島民の邪術の使い手から、習得した邪術師が現れ、恨みや怒り、妬みなどから邪術が行われるようになります。

2014年のニュースで、バヌアツで邪術を使ったとみなされた男性二人が村民に殺される事件もありました。

これはネットで調べたのですが、30人以上がその二人の呪術により殺されたと信じられていたようです。魔女狩りのようなことも最近まで?現在進行形?で行われているようです。

今も呪術が大半の人に信じられていて、黒魔術のような禍をもたらす邪術だけでなく、治療としての白魔術も信じられており、その施術者は300以上の薬草を使って治療もします。西洋医学で治らない病は邪術にかけられていると思われているようです。その薬草を近代科学で調べてみると、実際にその病に効く成分が含まれていたそうです。

そこで思い出すのがOリングテストによる診察です。実際に医師がOリングテストにより、患者に投与する薬を決めているクリニックもあるようです。

O-リングテスト – Wikipedia :

O-リングテスト(正式名称Bi-Digital O-Ring Test、略称BDORT)は、手の指の力による代替医療の診断法である。ニューヨーク在住の大村恵昭(1934 – )が発明し、1993年に米国特許5188107を取っている[1] 。

患者が手の指で輪(O-リング)を作り、診断者も指で輪を作って患者の指の輪を引っ張り、輪が離れるかどうかで診断する。この時、患者の体の異常がある部分を触ったり、患者の空いたほうの手で有害な薬や食物を持つと、患者の指の力が弱まりO-リングが開く、とされる。もともとこれはアプライドキネシオロジーの応用で、当初は腕の力の強弱による診断だった。のちにそれが指の力でも診断可能とされ、この診断方法が提唱された。 学術論文として検証可能な根拠が示されていないため、似非科学の範疇にあると考えてよい

wikiでは似非科学扱いされていますが、私は効く人には効くテストだと思っています。疑い深い人にはOリングテストだけでなく、西洋医学でさえ、上手く機能しないと思います。人の意識の効果にはまだまだ不思議な力があると思っています。西洋科学の臨床テストでもプラシーボ効果と言って、偽薬を効く薬と思って飲めばそれなりに効くことが証明されています。

300を超す薬草の効能を呪術者が探り当てたのも、潜在意識の不思議な力が察知しているのかもしれないと思っています。

ヴァヌアツの邪術の具体例は?

講演のレジメによりますと、ヴァヌアツの邪術の具体例としてナカイマス、ブラック・マジック、ポゼンという種類があり、それは知識や技能を習得することで誰もが使用可能な邪術です。

具体的には、

  • 呪物(植物、骨、灰など)を秘かに相手の飲食物に混入する
  • 相手の飲食物の残り、毛髪などを木の洞などに埋める。
  • 呪物を相手の通る道に埋める、相手に直接吹きかける。
  • 相手を呪文で夢遊病者のようにして誘い出し、殺害後、腹部に植物などを詰めて蘇生させる。相手は何事もなかったかのように過ごした後、数日して死亡する。

この4番目の例の、腹部に植物が詰まっていた事例ですが、ひょっとしたらなんらかの発達障害があり、夢遊病のようにふらふら歩いていて、異食があり、飢餓から植物を食べてしまい、それらにあたって死亡してしまったのを検死して、呪術を発想したのではないかと想像しました。

つまりありえないような不思議な事が起こった時、それは呪術のせいだ。として、納得したのではないでしょうか?

社会統制装置としての呪術

レジメによると、社会統制装置として呪術では、呪術の使い手とみなされる者、邪術の標的にされてしまう者はどのような人物か?とあり。

呪術の対象者は、強欲な者、不親切な者、利己的な者や。社会的に期待される義務を果たさない者、社会的規範・道徳の侵犯者があげられていました。

こうした人物とみなされないように振舞うことが重要とされてきたことで、社会がまとまり、安定性の維持や社会的混乱の防止になってきたようです。

う~む、発達障害者は邪術の対象者となって淘汰されてしまうのか?ふと障害者問題と結びつけてしまいました。

日本にも、障害があると間引きされたり、鬼子として忌み嫌われたりする価値観もありました。日本書紀でイザナギノミコト、イザナミノミコトの最初と次の子は 蛭子と泡の子として海に流されてしまいます。

その反対に障害児を大切にする思想も日本にはありました。のちに述べます。

 

日本の呪術は?

 

呪術として思い浮かべるのは、日本では丑の刻参りですね。消し難い恨みの解消法として藁人形にクギを打ち呪います。

白装束を身にまとい、髪を振り乱し、顔に白粉を塗り、頭に五徳(鉄輪)をかぶってそこに三本のロウソクを立て、あるいは一本歯の下駄[1](あるいは高下駄[5][注 1])を履き、胸にはをつるし[1][2]神社御神木に憎い相手に見立てた藁人形[1][2]毎夜、五寸釘で打ち込むというものが用いられる[2]五徳は三脚になっているので、これを逆さにかぶり、三本のロウソクを立てるのである[6]

丑の刻参りによって、妖怪を呼び出す女:葛飾北斎

呪われた相手は、藁人形に釘を打ちつけた部分から発病する

丑の刻参り – Wikipedia 

他に陰陽師や節分の追儺に登場する方相師なども呪術師ですね。考えてみれば日本人は無宗教のようにも言われますが、お正月には神社に初詣して氏神様を迎え、お雑煮やお節という縁起の良いものを食べ、季節ごとに節目ごとにお祝いしますね。ひな祭りに端午の節句、七夕に重陽の節句、あまりにも呪文めいた習わしだらけです。ヴァヌアツにみられるような、恨みの解消のための呪いは、日本にもあります。

その民族の長が呪術を用いるとき、それは集団を統治するための、重要なカリスマ性として発揮されたことでしょう。

卑弥呼も呪術を用いる巫女として民衆を統治しました。

古代の土偶や埴輪にも呪術の痕跡があります。

福祉概念に繋がる福子思想は仏教の福田からでは?

大阪には聖徳太子が建立された四天王寺があります。

四天王寺 – Wikipedia :

悲田・施薬・療病などを現代まで継承し社会的弱者の救済を行われています。

また光明皇后の垢すり供養伝説として以下のような伝説があります。光明皇后も四天王寺と同様に悲田院施薬院を作り慈善活動を行っています。

光明皇后 – Wikipedia :

非人千人に施浴する立願をした光明皇后の前に、全身に膿を持ち紫色に膨れた癩病者が来て、体中の膿を唇で吸い出して欲しいと申し出、皇后が膿を吸い出していると、みるみるその体は黄金色に輝き、阿釈迦如来となって飛び去ったという伝説

 

第11話「福田(ふくでん)」 : ←曹洞宗のお寺のページで、福田についての法話があります。

「福田」とは仏教で、善き行為の種子を蒔いて、功徳の収穫を得る田という意味で用います。

功徳を積む考え方の福田という法話から、連想されるのが福子思想です。

福子思想とは?

日本では古来より、知的障害者や身体障害者が生まれると「福子」「宝子」「福助」「福虫」と呼んで、家に福をもたらす者として大切に育てました。

同時に障害者差別もありました。障害者であることを原因に忌むというよりは「唖や白痴が出るのは氏神への信仰が薄いため」という戒めがあったこともあります。曹洞宗の盛んな地域では、福子思想は根付き、障害児は大切にされました。

足袋メーカーの福助は、水頭症の障害児ではないかと言われています。社のトレードマークとして福助さんとして大切にされ、会社に福をもたらしたのでしょうね。障害児を大切にする福子思想は聞くだけで、ありがたい気持ちになります。まさしく福をもたらす福子であり、福子を大切にすることで、周りを幸せにしていると思います。

障害児を穢れとして流してしまうのは、日本書紀にあります。日本建国のイザナギノミコトとイザナミノミコトが子生みをしたときに、泡の子と、蛭子を、失敗として海に流してしまいます。日本書紀のこの部分に障害児差別を感じひっかかっていました。

その後、流された蛭子は、流れ着いた土地で、エビス様として祀られます。とても救われた気がしました。

エビス信仰の元は、日本書紀のヒルコ

全国のエビス神社は、流されたヒルコを祀っている神社です。

エビスの文字もいろいろなエビスがあります。地名にもなっていますね。蛭子。戎。恵比寿。夷。

エビス様は大黒様とも呼ばれます。

ヒルコ – Wikipedia :

流された蛭子神が流れ着いたという伝説は日本各地に残っている。『源平盛衰記』では、摂津国に流れ着いて海を領する神となって夷三郎殿として西宮に現れた(西宮大明神)、と記している[2]。日本沿岸の地域では、漂着物をえびす神として信仰するところが多い。ヒルコとえびす(恵比寿・戎)を同一視する説は室町時代からおこった新しい説であり、それ以前に遡るような古伝承ではないが、古今集注解や芸能などを通じ広く浸透しており、蛭子と書いて「えびす」と読むこともある。現在、ヒルコ(蛭子神、蛭子命)を祭神とする神社は多く、和田神社(神戸市)、西宮神社兵庫県西宮市)などで祀られているが、恵比寿を祭神とする神社には恵比寿=事代主とするところも多い。

平安期の歌人大江朝綱は、「伊井諾尊」という題で、「たらちねはいかにあはれと思ふらん三年に成りぬ足たたずして」と詠み、神話では触れていない不具の子に対する親神の感情を付加し、この憐憫の情は、王権を脅かす穢れとして流された不具の子を憐れみ、異形が神の子の印(聖痕)とするのちの伝説や伝承に引き継がれた[2]。海のかなたから流れ着いた子が神であり、いずれ福をもたらすという蛭子の福神伝承が異相の釣魚翁であるエビス(夷/恵比寿など)と結びつき、ヒルコとエビスの混同につながったとされる[2]。また、ヒルコは日る子(太陽の子)であり、尊い「日の御子」であるがゆえに流された、とする貴種流離譚に基づく解釈もあり、こちらでは日の御子を守り仕えたのがエビスであるとする[2]

不具の子にまつわる類似の神話は世界各地に見られるとされるが、神話において一度葬った死神を後世に蘇生させて伝説や信仰の対象になった例は珍しいという[3]

エビスやヒルコや事代主については諸説ありすぎて解説できません。地域ごとに違うようです。

 

えびすを夷と書く場合もあり、夷は異民族の蔑称でもあります。海から流れ着いた異形のものを神としてあがめる風習は世界各地であります。

国譲り神話において釣りをしていたことから釣り好きとされ、海と関係の深いえびすと同一視され、海の神、五穀豊穣商売繁盛の神、としても信仰されている。七福神の中のえびすが大鯛を小脇に抱え釣竿を持っているのは、国譲り神話におけるこのエピソードによるものであるとwikiにあります。

えびす – Wikipedia :

障害児を神としてあがめるのは、インドのヒンズー教に見られるガネーシャ信仰にあります。現在でも、障害児を異形の神としてあがめるインドの地域があります。

ガネーシャは顔は象で身体は人の異形の神で、障害者そのものでもあり、繁栄の神様です。福子思想の元かもしれません。

 

人々が供物を捧げる行列ができるというガネーシャに似た赤ちゃん。

まず環境問題を解決しなければいけないと思いますが、奇形児を神としてあがめることにホッとします。インドにはたくさんの奇形児が生まれているそうです。古代にも奇形児が生まれると神としてあがめ、伝説が生まれたのでしょうか?

障害児が生まれると家が栄えるという逆転の発想に驚きますが、

障害児を大切にするという考えは、普通に幸せの条件であると思っています。

成熟していない社会では、障害者を排除したり排他的で社会全体が幸せそうには見えませんが。

成熟している社会は、障害者も普通に受け入れる思想は、すべての人々に幸福をもたらすと思います。

未成熟の排他的社会とは、一定の基準に合致しないと排除される世界であり、それは不運に障害を負えば、転落し排除される不安の大きい社会です。

成熟した社会とは、障害を後天的に受けても、そもそも障害者も受け入れられる社会なので、不安もなく、障害が不幸ではない社会です。

誰もが安心できる社会とは? 一定の基準を設けて排除することのない社会だと思います。

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